日本時間の昨夜、ミラノスカラのプルミエ、ドンジョヴァンニの日でした。
やっぱりネットラジオ中継があったので、とりあえず聞いてみた。
中継局はいくらでもあるのに、なぜかバイエルン放送にしてみた。
非常に音よく聞けて満足。たまーに途切れたけど、まあ、仕方ない。
それでですね、今回の主なテーマは、実は内容じゃないのだ。
(内容は年末にテレビでも見れるし、カーセンの演出がとってもよかったらしいので、たぶんテレビ見たら、またいっぱい書いちゃうだろうしね)
ひとことだけ言うなら、マゼット重くね?と思った。誰かと思ったらコーツェンでした。
つい最近、騎士長やってたしなあ。なぜかこの人は老け役が多いからな。
大審問官とかもやってたもんな。あれもピンとこなかったが、マゼットもピンとこないかも。
さて、本題。
今日の記事の主役は @teatroallascala さん。
そうなんです、あのスカラが、この秋からツイッター始めたのです。
なんとなくフォローしてたのですがこのアカウントのプルミエの荒ぶり方が尋常じゃなかった!
1、まず、公演の2時間前に楽屋口に潜入して、楽屋のドアの写真とかアップしてる
2、やってきた歌手のみなさんの写真をアップしてる(いいのか?)
3、メイクルームでお化粧してる歌手の皆さんの写真までアップ(いいのか?)
4、市長がきたとか首相がきたとかツイート
5、マエストロバレンボイムがピットへ、とツイート
6、イタリア国歌のために全員起立、とツイート
7、そして禁断の・・・・・
舞台写真キタ━━━(゚∀゚)━━━!!
まさかTwitterで、オペラの実況中継(写真付き)ですよ!
もうびっくりした!
Peter Mattei など、歌手のみなさんの舞台姿が垣間見れるなんて!
ラジオで聞いてたからすごい嬉しかったけど。
というわけで、トゥギャってみました。
#DonGiovanni @teatroallascala on twitter 2012
自分がまとめて見たかったから作ったけど、やはりなかなか見ごたえある仕上がり。
よかったら見てみてくださいね。
ミラノスカラのTwitterは本気出すとすごいぜ、という話でした。
2011年12月9日金曜日
2011年12月1日木曜日
2011年12月、スカラ座オープニングナイトのドン・ジョヴァンニはめちゃめちゃ豪華
さて、もはや方々で話題になっているので、私が書くまでもないのですが、ミラノ スカラのオープニングナイトがすごいことになっております。見てよこのキャスト!なんなんだこれは。よだれがでそうだ。
(注)なぜかマッテイはクリスマスアルバムばかり出しています(スウェーデン人であってフィンランド人じゃないんだけどなあ)が、そのうち一枚は比較的新しく、予約もできますし、ダウンロード販売なら今すぐでも買えるようです。
あと、古い方のクリスマスアルバムで良ければ、東京23区内で唯一、目黒区の図書館の蔵書に入っております。偉いぞ目黒区!私もほとぼりが冷めた頃(年明けでしょうかね?)に、借りに行きたいと思います。
ちなみにこのオープニングナイト、アメリカなどでは、映画館で生中継されるそうですが(いいないいないいな!)ここ、日本でも、TV放映が決定したようです。
12月26日(25日深夜)にいち早く放送とのこと。
というか、これ調べてたら芋づるで出てきたのがさ・・・
(次回に続く)
- Don Giovanni
- Peter Mattei
- Il Commendatore
- Kwangchul Youn
- Donna Anna
- Anna Netrebko
- Don Ottavio
- Giuseppe Filianoti
- Donna Elvira
- Barbara Frittoli
- Leporello
- Bryn Terfel
- Zerlina
- Anna Prohaska
- Masetto
- Štefan Kocán
(注)なぜかマッテイはクリスマスアルバムばかり出しています(スウェーデン人であってフィンランド人じゃないんだけどなあ)が、そのうち一枚は比較的新しく、予約もできますし、ダウンロード販売なら今すぐでも買えるようです。
あと、古い方のクリスマスアルバムで良ければ、東京23区内で唯一、目黒区の図書館の蔵書に入っております。偉いぞ目黒区!私もほとぼりが冷めた頃(年明けでしょうかね?)に、借りに行きたいと思います。
ちなみにこのオープニングナイト、アメリカなどでは、映画館で生中継されるそうですが(いいないいないいな!)ここ、日本でも、TV放映が決定したようです。
12月26日(25日深夜)にいち早く放送とのこと。
というか、これ調べてたら芋づるで出てきたのがさ・・・
(次回に続く)
2011年11月23日水曜日
Mozart: Don Giovanni (二期会創立60周年記念公演 ゲネプロ,日生劇場, Nov. 22. 2011)
まさか一週間に二回もドン・ジョヴァンニを見るとは思わなかった。
そういうこともあるんですね。
昨日は二期会創立60周年記念公演「ドン・ジョヴァンニ」のゲネプロを見学してきた。
キャストは後半組。(詳細は最下部に)
昨日書いたのですが、内容がネタばれまくりなので、初日がはねた今日まで待って公開します。
演出はカロリーネ・グルーバー、ライン・ドイツ・オペラとの共同制作ということで、ちょっとユーロトラッシュかも、と覚悟してきたつもりが、そんな覚悟が粉々に打ち砕かれる演出でした。いやぁ、私、ドイツのレジーなめてました。
胃が痛くて仕方ないです。まさか肉体的にくるとは。
前半はまだ大丈夫だっただけに、後半のショックがでかかったんだと思います。
しかしすごく勉強にはなったし、書きたいことはいっぱいあるのでさっさといってみよう。
オープニング、演出の都合で嵐と雷のSEから入ったけど、これはなくてもいいかも。というか、せっかくの序曲の入りの迫力が削がれた感があって、あまり好きでない演出でした。照明で嵐の描写しながらあの序曲流すだけで十分 、嵐のイメージになると思うんだけど。
なので、序曲の入りではちょっとずっこけた。SEと切れ目がなかったので、あ、いま入ったの?みたいになってしまった。そのせいか、序曲の前半、なんか遅い?もたもたしてる?と感じてやきもきしましたが、後半どんどんわたしの好きなスピードになっていったのでよかった。
しかしここでまさかの落とし穴 。レポレッロの声がうまく聞こえない。後半には調子出てきた部分もあったけど、今日のキャストの中で一番、歌がちょっとどうかな、と思ったのはレポレッロでした。
しかしドンナ・エルヴィーラの歌が超いい!(その後、女の人は3人とも超いいことが判明)
そしてジョヴァンニも、恐れていたよりずっといい!ジョバンニは声は高めに聞こえました。輝かしい系の声だと思う。ただ、ここぞという場面であんまり良くないときもあった(セレナーデがよくなかったのが痛かった。「お手をどうぞ」もそこまでよくなかったような気がするので、この辺が響きにくいのかも?)逆にレチタティーヴォはほとんど良かった。あと、シャンパンアリアをきっちり決めてくれたので、それだけで高得点です(シャンパンアリア、ちょっとゆっくりだったように感じました。ただ私が普段聞いてるのがペーター・マッテイのライブ音源で、めちゃめちゃ早くてきっちり決めてるやつなので、比べる私が良くないと思う)。
というわけで、これ以降、みんな声がよくて歌がうまいので楽しく聞けました。ツェルリーナも声がキンキンでなく、優しい響きだったから、いつもより全然腹が立たなかった(なぜかいつもツェルリーナというキャラに腹が立って仕方ないんですね。なにか個人的な恨みでもあるのだろうか)
マゼットもよかった。彼は出世魚系のマゼットですね。 背が高くて声がきれいでまだ若いから。早く出世して、よいレポレッロになってほしいものです。
(※出世魚系=「ドン・ジョバンニ」にはバスバリトンが歌える役が3つあり、その3つとはマゼット、レポレッロ、ジョバンニ。なので、若くて舞台映えのする、モーツァルトを歌えるバスバリトンが現れると、とりあえずマゼットから修行をはじめて、レポレッロを経由してドン・ジョヴァンニを目指す、というコースがよく取られます。これが出世魚コース。ルカ・ピサローニもこのタイプ。まだレポレッロですが。あとはアーウィン・シュロットとかもそう。逆にハイバリトンだと飛び級で直接ドン・ジョヴァンニ・コースしかない)
まあ、そんな感じで1幕終了。やや退廃的な空気を漂わせてはいますが、そういうのは別に平気なので、このくらいなら大丈夫だな、と思って油断してた私は2幕でぼっこぼこにされてしまうわけです。
もともと、かなり性的な表現をしっかりやる演出方針ではあった。1幕序盤のドンナ・アンナは完全に合意の上で性行為に及んでいるし(しかもそれをドン・オッターヴィオに「なにがあったか説明してください」と言われ歌うときに、後ろで再現用の役者が再現するという念の入れよう)。しかし、私がへこんだのは、単に過剰な性的表象だけではない(その程度ならせいぜい辟易する程度)。
ピンポイントで胃が痛くなったのはここ!
ジョヴァンニとレポレッロの入れ替わりシーン。
この入れ替わりのシーンがすごく好きで、たぶんドンジョヴァンニの中で好きなシーンベスト3に入るくらい好き(その次に好きなのが、美人がいる、と思って声かけたら、自分が捨てたドンナ・エルヴィーラだった、という通称「バカじゃないの」シーンです)なのですが、今回、なんとここで、入れ替わらない(涙)
まずは通常の演出ではどうするか、振り返りましょう。
(↓ちなみにこの演出だとジョヴァンニとレポレッロの体格差がありすぎて服を交換したあと、どっちも笑える姿になっているところもポイント)
ジョヴァンニが「ドンナ・エルヴィーラの女中を口説くから、ちょっとお前の上着かせ」といってレポレッロの上着を取り上げ、自分の上着を着せています。ちょうどそこへドンナ・エルヴィーラの声が聞こえ、チャンスとばかりに レポレッロに「おれのふりしろ」と指示して、エルヴィーラを口説く歌を歌います。レポレッロは歌に合わせて口パクで身振り(エア・ジョヴァンニ(笑))を披露。口説かれて、下に降りてきたエルヴィーラにレポレッロがジョバンニのフリをして近づいたところで本物のジョヴァンニが後ろからはやし立てて追い払い、女中にむかって(あの美しい)セレナーデを歌うのです。
で、今回の演出ではどうだったか。まず、そもそもドンナ・エルヴィーラがすごく近くにいる(通常のように上の階にいるわけじゃない)。服も着替えないまま、ジョヴァンニ本人が直接エルヴィーラに歌いかける。で、通常ならレポレッロへの指示であるレチタティーヴォを、レポレッロ・エルヴィーラ両方を目の前にして歌うんです。
そうするとどうなるか。
1、コメディとして超面白いこのシーンがまったくコメディじゃなくなる
服を着替えてエア・ジョヴァンニするだけですごく笑えるこのシーン、三重唱でレポレッロが「ああ、彼女またこれで騙されちゃうんだろうな」と歌ったところで大ウケ。とにかく笑える傑作シーンなのに、入れ替わらないとくすりとも笑えません。
2、ドンナ・エルヴィーラがすごく惨めなひとになる
全然入れ替わってないので、レポレッロとジョヴァンニを取り違えたわけでもなく、あくまでジョヴァンニの指示でレポレッロと一緒に出ていくので、なんだかねー。引くに引けなくなってしまった女の人の末路みたいで、見るに耐えられない感じなのです。エルヴィーラが涙ぐむ演技が入るし(この場面の醜悪さについて、わたしはいまもうまく書くことができない)
で、おえーってなってしまったのです。(ここで忍耐のゲージを振り切ってしまったらしい)
地獄落ちとそれ以降も工夫してたし、舞台装置も面白い発想ではあったけれど、なんかもうこの場面でいいや、と思ってしまいました。
(この場面の気持ち悪さについては、うまくかけるようになったら書きたいけれど、これをうまく整理できるようになる自信が今のところ全然ない)
なんでここまで嫌だったのかを、少し分析してみた。
例えば、ワーグナーのリングでなら、かなりえげつない話が進行しても私は全く抵抗はない。
(ちなみに、リングはそもそもえげつない話じゃないか、という指摘は全く正しい。)
「ドン・ジョヴァンニ」はドラマ・ジョコーゾ(dramma (giocoso) per musica(音楽のためのおどけたドラマ)と書いてあるくらいなので、コメディであることがこの作品の本性だと考える。
もちろん、この作品には人間のどうしようもなさ、救いのなさも書き込まれている。しかし同時に、それでも生きていく人間の強さや生き生きした暮らし、一般的な誠実さとは違っていてもキラキラと輝く美しい瞬間が丁寧に書き込まれている。
人間の醜悪さが作品に含まれているからといって、そればかりを強調してコメディ部分を捨象してしまうと、作品の楽しさが失われてしまうだけでなく、物語のリアルさをも薄めてしまうように感じます。
というようなことを感じました。
きょうはここまで。
今回の収穫のひとつは、私の中でのレジーの基準が少しはっきりしたことだな。
(まあ、それは文学の分析と同じなのだけど)
作品に全く含まれていないことをこじつけるのもレジーだが、
作品に含まれているある側面だけを取り出して、過剰に強調することで本来の文脈を失わせるような行為も、わたしはレジーと感じるのだと知りました。
レジー嫌い=保守的なオペラファン、と思われるとちょっと違うので、一応強調しておくと、
1、「お手をどうぞ」のデュエット。クリスマス番組かなにかでしょうね。はく息の白さ、コートの分厚さをみると超寒そう。でもいい歌。
(ちなみにこの女性の方、Lisa Nilsson さんというソウル歌手で、ヘッド・ボイスで歌えるとは思いもしなかった、という感想が寄せられているほど、声楽とは関係ない方なのだそうです。しかしあまりにうまくてびっくり。)
2、ドン・ジョヴァンニのセレナーデ
(別に2パターン貼る必要はなかったが、つい貼ってしまった。2つめのほうが音といい、質がいいのだけど、これを見てマッティの印象がオールバック眼鏡になってしまうと とても困るため)
ものはついでなのでもうこれも貼っちゃう。「フィガロの結婚」の宣伝でシアトルのケーブルテレビか何かのインタビューを受けるクヴィエーチェン(この映像は音は悪いです)。このインタビューを見るたびに、この人ほんといい人なんだなあ、と思う。最後になにか歌って、とお願いされて、じゃあドン・ジョヴァンニからシンプルな歌をひとつ、といってセレナーデを歌ってます。(3分40秒あたり)
おまけでシャンパンアリア。珍しいものを見つけたのではっておこう。
Mozart: Don Giovanni
(二期会創立60周年記念公演 ゲネプロ, 日生劇場, Nov. 22. 2011)
ドン・ジョヴァンニ 宮本益光
騎士長 斉木健詞
ドンナ・アンナ 文屋小百合
ドン・オッターヴィオ 今尾 滋
ドンナ・エルヴィーラ 小林由佳
レポレッロ 大塚博章
マゼット 近藤 圭
ツェルリーナ 盛田麻央
合唱: 二期会合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル
管弦楽: トウキョウ・モーツァルトプレイヤーズ
指揮: 沼尻竜典
演出: カロリーネ・グルーバー
装置: ロイ・スパーン
衣裳: メヒトヒルト・ザイペル
照明: 山本英明
演出助手: 家田 淳
舞台監督: 大仁田雅彦、飯田貴幸
公演監督: 三林輝夫
そういうこともあるんですね。
昨日は二期会創立60周年記念公演「ドン・ジョヴァンニ」のゲネプロを見学してきた。
キャストは後半組。(詳細は最下部に)
昨日書いたのですが、内容がネタばれまくりなので、初日がはねた今日まで待って公開します。
演出はカロリーネ・グルーバー、ライン・ドイツ・オペラとの共同制作ということで、ちょっとユーロトラッシュかも、と覚悟してきたつもりが、そんな覚悟が粉々に打ち砕かれる演出でした。いやぁ、私、ドイツのレジーなめてました。
胃が痛くて仕方ないです。まさか肉体的にくるとは。
前半はまだ大丈夫だっただけに、後半のショックがでかかったんだと思います。
しかしすごく勉強にはなったし、書きたいことはいっぱいあるのでさっさといってみよう。
オープニング、演出の都合で嵐と雷のSEから入ったけど、これはなくてもいいかも。というか、せっかくの序曲の入りの迫力が削がれた感があって、あまり好きでない演出でした。照明で嵐の描写しながらあの序曲流すだけで十分 、嵐のイメージになると思うんだけど。
なので、序曲の入りではちょっとずっこけた。SEと切れ目がなかったので、あ、いま入ったの?みたいになってしまった。そのせいか、序曲の前半、なんか遅い?もたもたしてる?と感じてやきもきしましたが、後半どんどんわたしの好きなスピードになっていったのでよかった。
しかしここでまさかの落とし穴 。レポレッロの声がうまく聞こえない。後半には調子出てきた部分もあったけど、今日のキャストの中で一番、歌がちょっとどうかな、と思ったのはレポレッロでした。
しかしドンナ・エルヴィーラの歌が超いい!(その後、女の人は3人とも超いいことが判明)
そしてジョヴァンニも、恐れていたよりずっといい!ジョバンニは声は高めに聞こえました。輝かしい系の声だと思う。ただ、ここぞという場面であんまり良くないときもあった(セレナーデがよくなかったのが痛かった。「お手をどうぞ」もそこまでよくなかったような気がするので、この辺が響きにくいのかも?)逆にレチタティーヴォはほとんど良かった。あと、シャンパンアリアをきっちり決めてくれたので、それだけで高得点です(シャンパンアリア、ちょっとゆっくりだったように感じました。ただ私が普段聞いてるのがペーター・マッテイのライブ音源で、めちゃめちゃ早くてきっちり決めてるやつなので、比べる私が良くないと思う)。
というわけで、これ以降、みんな声がよくて歌がうまいので楽しく聞けました。ツェルリーナも声がキンキンでなく、優しい響きだったから、いつもより全然腹が立たなかった(なぜかいつもツェルリーナというキャラに腹が立って仕方ないんですね。なにか個人的な恨みでもあるのだろうか)
マゼットもよかった。彼は出世魚系のマゼットですね。 背が高くて声がきれいでまだ若いから。早く出世して、よいレポレッロになってほしいものです。
(※出世魚系=「ドン・ジョバンニ」にはバスバリトンが歌える役が3つあり、その3つとはマゼット、レポレッロ、ジョバンニ。なので、若くて舞台映えのする、モーツァルトを歌えるバスバリトンが現れると、とりあえずマゼットから修行をはじめて、レポレッロを経由してドン・ジョヴァンニを目指す、というコースがよく取られます。これが出世魚コース。ルカ・ピサローニもこのタイプ。まだレポレッロですが。あとはアーウィン・シュロットとかもそう。逆にハイバリトンだと飛び級で直接ドン・ジョヴァンニ・コースしかない)
まあ、そんな感じで1幕終了。やや退廃的な空気を漂わせてはいますが、そういうのは別に平気なので、このくらいなら大丈夫だな、と思って油断してた私は2幕でぼっこぼこにされてしまうわけです。
もともと、かなり性的な表現をしっかりやる演出方針ではあった。1幕序盤のドンナ・アンナは完全に合意の上で性行為に及んでいるし(しかもそれをドン・オッターヴィオに「なにがあったか説明してください」と言われ歌うときに、後ろで再現用の役者が再現するという念の入れよう)。しかし、私がへこんだのは、単に過剰な性的表象だけではない(その程度ならせいぜい辟易する程度)。
ピンポイントで胃が痛くなったのはここ!
ジョヴァンニとレポレッロの入れ替わりシーン。
この入れ替わりのシーンがすごく好きで、たぶんドンジョヴァンニの中で好きなシーンベスト3に入るくらい好き(その次に好きなのが、美人がいる、と思って声かけたら、自分が捨てたドンナ・エルヴィーラだった、という通称「バカじゃないの」シーンです)なのですが、今回、なんとここで、入れ替わらない(涙)
まずは通常の演出ではどうするか、振り返りましょう。
(↓ちなみにこの演出だとジョヴァンニとレポレッロの体格差がありすぎて服を交換したあと、どっちも笑える姿になっているところもポイント)
ジョヴァンニが「ドンナ・エルヴィーラの女中を口説くから、ちょっとお前の上着かせ」といってレポレッロの上着を取り上げ、自分の上着を着せています。ちょうどそこへドンナ・エルヴィーラの声が聞こえ、チャンスとばかりに レポレッロに「おれのふりしろ」と指示して、エルヴィーラを口説く歌を歌います。レポレッロは歌に合わせて口パクで身振り(エア・ジョヴァンニ(笑))を披露。口説かれて、下に降りてきたエルヴィーラにレポレッロがジョバンニのフリをして近づいたところで本物のジョヴァンニが後ろからはやし立てて追い払い、女中にむかって(あの美しい)セレナーデを歌うのです。
で、今回の演出ではどうだったか。まず、そもそもドンナ・エルヴィーラがすごく近くにいる(通常のように上の階にいるわけじゃない)。服も着替えないまま、ジョヴァンニ本人が直接エルヴィーラに歌いかける。で、通常ならレポレッロへの指示であるレチタティーヴォを、レポレッロ・エルヴィーラ両方を目の前にして歌うんです。
そうするとどうなるか。
1、コメディとして超面白いこのシーンがまったくコメディじゃなくなる
服を着替えてエア・ジョヴァンニするだけですごく笑えるこのシーン、三重唱でレポレッロが「ああ、彼女またこれで騙されちゃうんだろうな」と歌ったところで大ウケ。とにかく笑える傑作シーンなのに、入れ替わらないとくすりとも笑えません。
2、ドンナ・エルヴィーラがすごく惨めなひとになる
全然入れ替わってないので、レポレッロとジョヴァンニを取り違えたわけでもなく、あくまでジョヴァンニの指示でレポレッロと一緒に出ていくので、なんだかねー。引くに引けなくなってしまった女の人の末路みたいで、見るに耐えられない感じなのです。エルヴィーラが涙ぐむ演技が入るし(この場面の醜悪さについて、わたしはいまもうまく書くことができない)
で、おえーってなってしまったのです。(ここで忍耐のゲージを振り切ってしまったらしい)
地獄落ちとそれ以降も工夫してたし、舞台装置も面白い発想ではあったけれど、なんかもうこの場面でいいや、と思ってしまいました。
(この場面の気持ち悪さについては、うまくかけるようになったら書きたいけれど、これをうまく整理できるようになる自信が今のところ全然ない)
なんでここまで嫌だったのかを、少し分析してみた。
例えば、ワーグナーのリングでなら、かなりえげつない話が進行しても私は全く抵抗はない。
(ちなみに、リングはそもそもえげつない話じゃないか、という指摘は全く正しい。)
「ドン・ジョヴァンニ」はドラマ・ジョコーゾ(dramma (giocoso) per musica(音楽のためのおどけたドラマ)と書いてあるくらいなので、コメディであることがこの作品の本性だと考える。
もちろん、この作品には人間のどうしようもなさ、救いのなさも書き込まれている。しかし同時に、それでも生きていく人間の強さや生き生きした暮らし、一般的な誠実さとは違っていてもキラキラと輝く美しい瞬間が丁寧に書き込まれている。
人間の醜悪さが作品に含まれているからといって、そればかりを強調してコメディ部分を捨象してしまうと、作品の楽しさが失われてしまうだけでなく、物語のリアルさをも薄めてしまうように感じます。
というようなことを感じました。
きょうはここまで。
今回の収穫のひとつは、私の中でのレジーの基準が少しはっきりしたことだな。
(まあ、それは文学の分析と同じなのだけど)
作品に全く含まれていないことをこじつけるのもレジーだが、
作品に含まれているある側面だけを取り出して、過剰に強調することで本来の文脈を失わせるような行為も、わたしはレジーと感じるのだと知りました。
レジー嫌い=保守的なオペラファン、と思われるとちょっと違うので、一応強調しておくと、
- 現代オペラ大好きです。昨シーズンのNixon in China もすごく楽しかったし、今シーズンのSatyagrahaも楽しみにしてます。(というかサティアグラハはタイトルロールがリチャード・クロフトなんですよ!この人は本当に美声で、テノールなんか褒めたことない私が手放しで絶賛してたりして。ああもう今から楽しみ)
- 視覚的な派手さな演出や革新的な装置とか、めちゃくちゃ好きです。METが今、積極的に演劇の演出家にオペラ演出をさせてますが、ああいうのもどんどんやってほしい。基本的に派手好きで新しいもの好きなのです。
1、「お手をどうぞ」のデュエット。クリスマス番組かなにかでしょうね。はく息の白さ、コートの分厚さをみると超寒そう。でもいい歌。
(ちなみにこの女性の方、Lisa Nilsson さんというソウル歌手で、ヘッド・ボイスで歌えるとは思いもしなかった、という感想が寄せられているほど、声楽とは関係ない方なのだそうです。しかしあまりにうまくてびっくり。)
2、ドン・ジョヴァンニのセレナーデ
(別に2パターン貼る必要はなかったが、つい貼ってしまった。2つめのほうが音といい、質がいいのだけど、これを見てマッティの印象がオールバック眼鏡になってしまうと とても困るため)
ものはついでなのでもうこれも貼っちゃう。「フィガロの結婚」の宣伝でシアトルのケーブルテレビか何かのインタビューを受けるクヴィエーチェン(この映像は音は悪いです)。このインタビューを見るたびに、この人ほんといい人なんだなあ、と思う。最後になにか歌って、とお願いされて、じゃあドン・ジョヴァンニからシンプルな歌をひとつ、といってセレナーデを歌ってます。(3分40秒あたり)
おまけでシャンパンアリア。珍しいものを見つけたのではっておこう。
Mozart: Don Giovanni
(二期会創立60周年記念公演 ゲネプロ, 日生劇場, Nov. 22. 2011)
ドン・ジョヴァンニ 宮本益光
騎士長 斉木健詞
ドンナ・アンナ 文屋小百合
ドン・オッターヴィオ 今尾 滋
ドンナ・エルヴィーラ 小林由佳
レポレッロ 大塚博章
マゼット 近藤 圭
ツェルリーナ 盛田麻央
合唱: 二期会合唱団、びわ湖ホール声楽アンサンブル
管弦楽: トウキョウ・モーツァルトプレイヤーズ
指揮: 沼尻竜典
演出: カロリーネ・グルーバー
装置: ロイ・スパーン
衣裳: メヒトヒルト・ザイペル
照明: 山本英明
演出助手: 家田 淳
舞台監督: 大仁田雅彦、飯田貴幸
公演監督: 三林輝夫
ラベル:
Don Giovanni,
Mozart,
オペラ,
二期会
2011年11月22日火曜日
Mozart: Don Giovanni (MET Live in HD, Oct. 29. 2011)
話題騒然だったMET Live in HD のドン・ジョヴァンニを見てきた。
いろいろなことが起こったので、ついつい初日以降、劇評など読んでいたために、この3週間がひどく長く感じられてしまった。
新宿ピカデリーでは一番大きい1番スクリーンでの上映。1番スクリーンは音響も一番いいので期待できます。580席。
週末なのでぎっしり埋まっている感じでした 。
今回のドン・ジョヴァンニには(私的)見どころが何点かあって、それは
1、マリウシュ・クヴィエーチェンはちゃんと動けているか(手術から2週間なので身体が心配)
2、つまらないといわれている演出は実際どう感じられるのか
3、ドン・ジョバンニとレポレッロの関係を、この演出ではどのように見せているか
(まあ、他にも、
・クヴィエーチェンのかつらは変じゃないか
・今回ジョヴァンニよりレポレッロのほうがずっと背が高いという現実の前に、きちんとクヴィエーチェンは風格を出せているか、
・ドンナ・エルヴィーラをだますシーンで、この明らかな身長差をどうやって処理しているか
など、もろもろ細かいチェックポイントもあったのだが、それはおいおい)
オペラファン歴の短い私としては非常に珍しいことだが、ルカ・ピザローニのレポレッロは、以前、見たことがある。
ワールドクラシック@シネマ2011で2010年7月のグラインドボーン音楽祭のドン・ジョヴァンニを見たのだ。(2011年8月)
ワールドクラシック@シネマ2011 ドン・ジョヴァンニ
このときはジョヴァンニがジェラルド・フィンリー(奇しくも、今回のMETの後半のキャストのジョヴァンニでもある。ただし後半はレポレッロもジョン・レリエに交代)だった。
演出は現代風で、レポレッロはポラロイドカメラを首からかけて、女の子たちの写真を撮ってカタログに入れてました(となるとカタログというよりアルバムだな。 便利でいいなーと思いました。首からカメラ下げてるピザローニを見て、なぜか「ローマの休日」の新聞記者を思い出した)。
で、その時の感想メモが残ってるんだけど
映画館で「ドン・ジョバンニ」よかった。笑いどころの多い演出、割とリアルな血糊と現代衣装でとっつきやすい仕上がり。しかしおいしいところはレポレッロ が持って行ったなぁ。ルカ・ピザローニさん。覚えておこう。ジェラルド・フィンリーは悪くないけど、ジョバンニっていう役は複雑すぎるなぁと思う
というあっさりしたもの。(これを読むと、この頃、私は「ドン・ジョヴァンニ」に興味なかったということがよくわかる)。全然感激してない書き方だ。まあ、ぶっちゃけてしまえば、ジェラルド・フィンリーのジョヴァンニが全然良くなかったんですね(今思えば)
なんか機嫌悪い感じで、こんなんで1800人もの女の人がなびくのかな?そうは思えないけどなあ(しかも隣にいるレポレッロのほうが、若いしかっこいいし優しそうで楽しそうにしているし)と思った覚えがある。しかもレポレッロといまいちかみ合ってない?なんかフィンリーにとりつくしまがなくて、という印象が強かった。
なのでこのときはピザローニの一人勝ちだったのですよ。私のなかでは。
だから、今回のMETのキャストを最初聞いたときはちょっとびびりました。
これはまさか、演技派で鳴らしたクヴィエーチェンが食われてしまうこともありうる?と思ったのです。演技のみならず、ピサローニがとても長身でイタリア人でわかりやすいハンサム、というのも、ちょっとした懸案事項だったわけです。
(少し調べてその心配はすぐ払拭されました。二人はジョヴァンニとマゼットで共演したこともあるし、伯爵とフィガロでの共演もあったから(もちろん「フィガロの結婚」の方ね。いくらハイバリトンでも、ロッシーニテノールの伯爵にはなれませんから)
というより、本来、ピザローニのレポレッロはかなり控えめなようです。レポレッロをやるときは、もちろんジョヴァンニの役に合わせるところからはじめます、とインターミッションのインタビューでも言っていましたし。だからよほど私がフィンリーのジョヴァンニと合わなかったんだろうと思う。フィンリーいい人だと思うんですけどね。別の役で見てみたいです)
クヴィエーチェンのジョヴァンニはたしかにノーブルですね。高貴で華やかで動きが機敏で頭の回転が速くてゲーム好きな感じ。余裕があるというよりはスピーディ。ちょっと躁的な気もします。なんだってお茶の子さいさいでできるけど、なんだってうまくいってしまうことが不満、という素振りを感じます。(でも実際は、オペラの中ではすべての企みは失敗しているのだけど)
クヴィエーチェンの声はすごく不思議で、CDに録音された歌声を聞くと無理に深い声を出そうとしているように聞こえてしまうのですが、オペラの映像の中で聞くと、心地よい軽い声に聞こえるんですよね。私には。なんでだろう?これはすごく不思議なことです。私としては、オペラの中で響く彼の声を魅力的に感じます。セレナーデとか、本当に綺麗でした。声の調子が悪くなくて安心しました。
ピザローニの歌もすごくいいです。聞いていて楽しくなるレポレッロらしさがよく出ている歌い方だと思います。あとレチタティーヴォ。ネイティヴのイタリア人なのもあり、レチタティーヴォが綺麗で表情豊かな歌声でした。
バーバラ・フリットリはいつも美しい声でうっとりしますが今回も綺麗でした。
(あとはあまり印象に残らなかった。ツェルリーナってなんで毎回、キンキン声のソプラノがキャストされるんですかね?そういう役作りなのか?音域の問題か?)
まずオープニングから。ゲネプロではテラスでもみあってたジョヴァンニとドンナアンナですが、地面で争っています(クヴィエーチェンに梯子を登らせないためだと思う。)この変更はそんなに違和感なく進みました。クヴィエーチェンもちゃんと争ってます。騎士長と戦うシーンも、ちょっと手加減しているけれど、そこまで間延びした演技じゃない。まず、ひとつめの心配はクリアのようです。
演出ですが、たしかに舞台装置はあまりよくはないかもしれない。
アパートのバルコニーみたいなのがたくさん並んでいる壁が立っていて、適宜、その壁が真ん中から分かれ、左右に開く仕組みです。なんというか、圧迫感があるし、床の面積があまりないし、奥行もないのがちょっと視覚的にはあまり面白くないかも。
しかし(これはMETのライブビューイングではよくあることですが)ライブビューイングのカメラはかなりアップで歌手を映すので、実際にオペラハウスの観客席からの舞台を見るのに比べ、舞台装置の粗が気にならない傾向が強いです。なので今回も、あまりいい舞台装置じゃないだろうけど映像で見る分には気にならない、というのが私の素直な感想です。
ちなみにレポレッロが替え玉になってエルヴィーラを騙すとき、ピザローニは身長差をごまかすため、主にフリットリの身体に抱きついて、彼女が立ってられないようにしてました。タックルするみたいに。もしふつうに並んで立ったら、(フリットリとクヴィエーチェンはほぼ同じくらいの身長なのに対し)ピサローニは頭一つ分、差があってバレバレなので、こういうところは工夫してますね。
ジョヴァンニとレポレッロの関係について、このプロダクションはかなり力を入れている、というのが事前から語られていました。例えばアンナ・ボレーナのインターミッションでのインタビューでは
司会のルネ・フレミングに
「今回のプロダクションにはこれまでのドンジョヴァンニとは違う、新しいアプローチがありますね。あなたとマリウシュは演出のマイケル・グランデージとともにどのようにして役にアチーブしたの?」と聞かれたピザローニが
「まず、わたしたちはドンジョヴァンニとレポレッロの関係がこのオペラの鍵になる要素だという事実に同意しました。ですから、関係性を築き上げることに長い時間をかけました。特に私の役にとってそれは重要なことでした。・・・彼らはまるで結婚しているカップルのように、愛憎半ばする関係なのです。」
というふうに回答しています
ここまで言っておいてそれが舞台に反映していなかったらちょっと悲しいので、どのくらいそれが見えるのかに関心がありました。
まず(劇評でもかなり指摘されてましたが)レポレッロが召使いというにはあまりにもノーブル(笑)
まあ、それはピサローニの外見と、やや控えめな演技から、仕方のないことではあります。
私個人として、粗野なレポレッロよりこういうレポレッロのほうが表現としては好きです。
むしろそれをよく利用して、今回の2人は劇中ではドン・ジョヴァンニと召使いというより、ドン・ジョヴァンニとその見習いみたいのように見えました(実際、近い将来、確実にジョヴァンニをやるであろうピザローニ自身は、まぎれもなくジョヴァンニ見習いともいえます)
今回、ジョヴァンニが一番嬉しそうだったのは、またカタログの人数が増えるぞ!とレポレッロに言うシーン(ちなみにこのときのレポレッロもすっごく嬉しそう)
このふたりのカタログにかける意気込みを見ていると、女の人と関係を持つより何より、ふたりでカタログ作ってるのが楽しいんだろうな、と思わせる仕上がりです
(なので今回は女性キャラクターたちは置いてかれてる感が強いかもしれません)
この解釈自体はそこまで新しいものとは思いませんが、こうして意図した、ジョヴァンニとレポレッロの関係に焦点をあてた演技を作り上げ、その演出をきちんと舞台上で表現できていることは評価に値すると思います。
そして、なにより特筆するべきは、今回のドン・ジョヴァンニは、キャスト全体の一体感がとても高く感じられたことだと思います。
今回の演出家のマイケル・グランデージは装置のディレクションでは、あまり高い評価を受けられそうもないけれど、歌手に対して舞台上でキャスト全体に一体感を持った演技をさせることに成功している点は、評価されるべきだと思います。
舞台上の一体感が良く、たくさん笑える、すごく面白いドン・ジョヴァンニでした。
私としては、見る価値は確実にあると思いますので 、もし迷っている方は、ぜひ、映画館へお運びください。
私ももう一回見たいけど、もう今週は行く時間がないからなぁ。
あ、そうそう、クヴィエーチェンのかつらはかっこわるくなかったです。
良い出来で安心しました。
(MET Live in HD, Oct. 29. 2011)
New production
いろいろなことが起こったので、ついつい初日以降、劇評など読んでいたために、この3週間がひどく長く感じられてしまった。
新宿ピカデリーでは一番大きい1番スクリーンでの上映。1番スクリーンは音響も一番いいので期待できます。580席。
週末なのでぎっしり埋まっている感じでした 。
今回のドン・ジョヴァンニには(私的)見どころが何点かあって、それは
1、マリウシュ・クヴィエーチェンはちゃんと動けているか(手術から2週間なので身体が心配)
2、つまらないといわれている演出は実際どう感じられるのか
3、ドン・ジョバンニとレポレッロの関係を、この演出ではどのように見せているか
(まあ、他にも、
・クヴィエーチェンのかつらは変じゃないか
・今回ジョヴァンニよりレポレッロのほうがずっと背が高いという現実の前に、きちんとクヴィエーチェンは風格を出せているか、
・ドンナ・エルヴィーラをだますシーンで、この明らかな身長差をどうやって処理しているか
など、もろもろ細かいチェックポイントもあったのだが、それはおいおい)
オペラファン歴の短い私としては非常に珍しいことだが、ルカ・ピザローニのレポレッロは、以前、見たことがある。
ワールドクラシック@シネマ2011で2010年7月のグラインドボーン音楽祭のドン・ジョヴァンニを見たのだ。(2011年8月)
ワールドクラシック@シネマ2011 ドン・ジョヴァンニ
このときはジョヴァンニがジェラルド・フィンリー(奇しくも、今回のMETの後半のキャストのジョヴァンニでもある。ただし後半はレポレッロもジョン・レリエに交代)だった。
演出は現代風で、レポレッロはポラロイドカメラを首からかけて、女の子たちの写真を撮ってカタログに入れてました(となるとカタログというよりアルバムだな。 便利でいいなーと思いました。首からカメラ下げてるピザローニを見て、なぜか「ローマの休日」の新聞記者を思い出した)。
で、その時の感想メモが残ってるんだけど
映画館で「ドン・ジョバンニ」よかった。笑いどころの多い演出、割とリアルな血糊と現代衣装でとっつきやすい仕上がり。しかしおいしいところはレポレッロ が持って行ったなぁ。ルカ・ピザローニさん。覚えておこう。ジェラルド・フィンリーは悪くないけど、ジョバンニっていう役は複雑すぎるなぁと思う
というあっさりしたもの。(これを読むと、この頃、私は「ドン・ジョヴァンニ」に興味なかったということがよくわかる)。全然感激してない書き方だ。まあ、ぶっちゃけてしまえば、ジェラルド・フィンリーのジョヴァンニが全然良くなかったんですね(今思えば)
なんか機嫌悪い感じで、こんなんで1800人もの女の人がなびくのかな?そうは思えないけどなあ(しかも隣にいるレポレッロのほうが、若いしかっこいいし優しそうで楽しそうにしているし)と思った覚えがある。しかもレポレッロといまいちかみ合ってない?なんかフィンリーにとりつくしまがなくて、という印象が強かった。
なのでこのときはピザローニの一人勝ちだったのですよ。私のなかでは。
だから、今回のMETのキャストを最初聞いたときはちょっとびびりました。
これはまさか、演技派で鳴らしたクヴィエーチェンが食われてしまうこともありうる?と思ったのです。演技のみならず、ピサローニがとても長身でイタリア人でわかりやすいハンサム、というのも、ちょっとした懸案事項だったわけです。
(少し調べてその心配はすぐ払拭されました。二人はジョヴァンニとマゼットで共演したこともあるし、伯爵とフィガロでの共演もあったから(もちろん「フィガロの結婚」の方ね。いくらハイバリトンでも、ロッシーニテノールの伯爵にはなれませんから)
というより、本来、ピザローニのレポレッロはかなり控えめなようです。レポレッロをやるときは、もちろんジョヴァンニの役に合わせるところからはじめます、とインターミッションのインタビューでも言っていましたし。だからよほど私がフィンリーのジョヴァンニと合わなかったんだろうと思う。フィンリーいい人だと思うんですけどね。別の役で見てみたいです)
クヴィエーチェンのジョヴァンニはたしかにノーブルですね。高貴で華やかで動きが機敏で頭の回転が速くてゲーム好きな感じ。余裕があるというよりはスピーディ。ちょっと躁的な気もします。なんだってお茶の子さいさいでできるけど、なんだってうまくいってしまうことが不満、という素振りを感じます。(でも実際は、オペラの中ではすべての企みは失敗しているのだけど)
クヴィエーチェンの声はすごく不思議で、CDに録音された歌声を聞くと無理に深い声を出そうとしているように聞こえてしまうのですが、オペラの映像の中で聞くと、心地よい軽い声に聞こえるんですよね。私には。なんでだろう?これはすごく不思議なことです。私としては、オペラの中で響く彼の声を魅力的に感じます。セレナーデとか、本当に綺麗でした。声の調子が悪くなくて安心しました。
ピザローニの歌もすごくいいです。聞いていて楽しくなるレポレッロらしさがよく出ている歌い方だと思います。あとレチタティーヴォ。ネイティヴのイタリア人なのもあり、レチタティーヴォが綺麗で表情豊かな歌声でした。
バーバラ・フリットリはいつも美しい声でうっとりしますが今回も綺麗でした。
(あとはあまり印象に残らなかった。ツェルリーナってなんで毎回、キンキン声のソプラノがキャストされるんですかね?そういう役作りなのか?音域の問題か?)
まずオープニングから。ゲネプロではテラスでもみあってたジョヴァンニとドンナアンナですが、地面で争っています(クヴィエーチェンに梯子を登らせないためだと思う。)この変更はそんなに違和感なく進みました。クヴィエーチェンもちゃんと争ってます。騎士長と戦うシーンも、ちょっと手加減しているけれど、そこまで間延びした演技じゃない。まず、ひとつめの心配はクリアのようです。
演出ですが、たしかに舞台装置はあまりよくはないかもしれない。
アパートのバルコニーみたいなのがたくさん並んでいる壁が立っていて、適宜、その壁が真ん中から分かれ、左右に開く仕組みです。なんというか、圧迫感があるし、床の面積があまりないし、奥行もないのがちょっと視覚的にはあまり面白くないかも。
しかし(これはMETのライブビューイングではよくあることですが)ライブビューイングのカメラはかなりアップで歌手を映すので、実際にオペラハウスの観客席からの舞台を見るのに比べ、舞台装置の粗が気にならない傾向が強いです。なので今回も、あまりいい舞台装置じゃないだろうけど映像で見る分には気にならない、というのが私の素直な感想です。
ちなみにレポレッロが替え玉になってエルヴィーラを騙すとき、ピザローニは身長差をごまかすため、主にフリットリの身体に抱きついて、彼女が立ってられないようにしてました。タックルするみたいに。もしふつうに並んで立ったら、(フリットリとクヴィエーチェンはほぼ同じくらいの身長なのに対し)ピサローニは頭一つ分、差があってバレバレなので、こういうところは工夫してますね。
ジョヴァンニとレポレッロの関係について、このプロダクションはかなり力を入れている、というのが事前から語られていました。例えばアンナ・ボレーナのインターミッションでのインタビューでは
司会のルネ・フレミングに
「今回のプロダクションにはこれまでのドンジョヴァンニとは違う、新しいアプローチがありますね。あなたとマリウシュは演出のマイケル・グランデージとともにどのようにして役にアチーブしたの?」と聞かれたピザローニが
「まず、わたしたちはドンジョヴァンニとレポレッロの関係がこのオペラの鍵になる要素だという事実に同意しました。ですから、関係性を築き上げることに長い時間をかけました。特に私の役にとってそれは重要なことでした。・・・彼らはまるで結婚しているカップルのように、愛憎半ばする関係なのです。」
というふうに回答しています
ここまで言っておいてそれが舞台に反映していなかったらちょっと悲しいので、どのくらいそれが見えるのかに関心がありました。
まず(劇評でもかなり指摘されてましたが)レポレッロが召使いというにはあまりにもノーブル(笑)
まあ、それはピサローニの外見と、やや控えめな演技から、仕方のないことではあります。
私個人として、粗野なレポレッロよりこういうレポレッロのほうが表現としては好きです。
むしろそれをよく利用して、今回の2人は劇中ではドン・ジョヴァンニと召使いというより、ドン・ジョヴァンニとその見習いみたいのように見えました(実際、近い将来、確実にジョヴァンニをやるであろうピザローニ自身は、まぎれもなくジョヴァンニ見習いともいえます)
今回、ジョヴァンニが一番嬉しそうだったのは、またカタログの人数が増えるぞ!とレポレッロに言うシーン(ちなみにこのときのレポレッロもすっごく嬉しそう)
このふたりのカタログにかける意気込みを見ていると、女の人と関係を持つより何より、ふたりでカタログ作ってるのが楽しいんだろうな、と思わせる仕上がりです
(なので今回は女性キャラクターたちは置いてかれてる感が強いかもしれません)
この解釈自体はそこまで新しいものとは思いませんが、こうして意図した、ジョヴァンニとレポレッロの関係に焦点をあてた演技を作り上げ、その演出をきちんと舞台上で表現できていることは評価に値すると思います。
そして、なにより特筆するべきは、今回のドン・ジョヴァンニは、キャスト全体の一体感がとても高く感じられたことだと思います。
今回の演出家のマイケル・グランデージは装置のディレクションでは、あまり高い評価を受けられそうもないけれど、歌手に対して舞台上でキャスト全体に一体感を持った演技をさせることに成功している点は、評価されるべきだと思います。
舞台上の一体感が良く、たくさん笑える、すごく面白いドン・ジョヴァンニでした。
私としては、見る価値は確実にあると思いますので 、もし迷っている方は、ぜひ、映画館へお運びください。
私ももう一回見たいけど、もう今週は行く時間がないからなぁ。
あ、そうそう、クヴィエーチェンのかつらはかっこわるくなかったです。
良い出来で安心しました。
Mozart: Don Giovanni
(MET Live in HD, Oct. 29. 2011)
New production
Don Giovanni
|
Mariusz Kwiecien
|
Leporello
|
Luca Pisaroni
|
Donna Anna
|
Marina Rebeka
|
Donna Elvira
|
Barbara Frittoli
|
Don Ottavio
|
Ramón Vargas
|
Zerlina
|
Mojca Erdmann
|
Masetto
|
Joshua Bloom
|
Commendatore
Conductor:
Director:
Set Designs:
Costumes:
Lighting:
|
Stefan Kocan
Fabio Luisi
Michael Grandage
Christopher Oram
Christopher Oram
Paule Constable
|
2011年11月7日月曜日
METのDon Giovanniに何が起こったか
ここしばらく、私の最大の関心事であったMETのDon Giovanniに何が起こったか、時系列にまとめてみました。
(むしろなぜ、リアルタイムで書いておかなかった、とあのときの自分に言ってやりたいが、当時は全然思いつかなかった)
2011年、METのドン・ジョヴァンニは、マイケル・グランデージによる新演出、ポーランドの若手実力派バリトン、マリウシュ・クヴィエーチェンをタイトルロールに、バルバラ・フリットリ、ルカ・ピサローニ、ラモン・ヴァルガスなど実力ある歌手を取り揃え、Live in HDの第二作目として期待された作品でした。
10月13日(木)にプレミア、29(土)がLive in HD。
公演は10/13,17,22,25,29と11/3,7,11の8回(その後、ドンナ・アンナ以外の主要キャスト総入れ替えで2月3月に8回公演)予定。
そこになにが起こったのか。
以下、時間は日本時間から逆算しているので、おおよその推定時間です。
()内が日本時間。
では、いってみよう。
2011.10.10(月) 午後3時
(2011.10.11(火) 午前4時)
10日(月)に行われていた、ドン・ジョヴァンニのドレスリハーサル中、タイトルロールのマリウシュ・クヴィエーチェンが腰の痛みにより、病院に運ばれた、という第一報が入る。Daniel Wakin (New York Timesのクラシック担当)のtweetより。
2011.10.10(月) 午後6時、
(2011.10.11(火) 午前7時)
METにより、13(木)のプレミアのタイトルロールは負傷したクヴィエーチェンに代わり、ペーター・マッティによって歌われることが発表される。MetOperaのtweetより
2011.10.11(火) 午後0時
(2011.10.12(水) 午前1時)
クヴィエーチェンは腰の手術を受けた。月曜日のリハーサルは途中で退出し、木曜日のプレミアはキャンセルした。Daniel Wakin (New York Timesのクラシック担当)のtweetより。
2011.10.12(水) 午後2時
(2011.10.13(木) 午前3時)、
METにより、クヴィエーチェンは月末までジョヴァンニを歌わない。17(月)と22(土)は ペーター・マッティが歌い、25(火)と29(土)(←Live in HDの日)はTBA(未定)と発表される。MetOperaのtweetより
2011.10.14(金) 午後2時
(2011.10.15(土) 午前3時)
METにより、25(火)と29(土)のLive in HDでは クヴィエーチェンがドン・ジョヴァンニのタイトルロールを歌うことが発表される。MetOperaのtweetより
2011.10.15(土) 午後2時、
(2011.10.16(日) 午前3時)
2011-2012シーズン Live in HD 第一作 アンナ・ボレーナのインターミッションにドン・ジョヴァンニのメンバーが出演。
クヴィエーチェンは「まず、現在は元気です。数日前に手術を受けましたが、ご覧のように現在は歩けるし、少しなら走ることもできる。まだ本番まで1週間あります。METのジャパンツアーのとき、腰、椎間板に痛みがありましたが、その時は仕事が出来る程度の痛みでした。しかしこのリハーサルの際、騎士団長との戦いの終わりで、彼を殺そうとしたら、自分の腰にとどめを刺してしまった。それで病院へ連れていかれ、ほんの少しだけど手術しました。」とコメント。
「でもすごく健康そうね。手術から4日しか経っていないなんて信じられないくらい」とルネ・フレミングのコメント。
つまり、主役のクヴィエーチェンがプレミア3日前のドレスリハーサルで腰の負傷で降板し、代役のマッティがプレミアと3回の公演のタイトルロールを務めたが、周囲の心配を受けながらも驚異的なスピードで回復したクヴィエーチェンが手術後、たった2週間で舞台に舞い戻ってきたのです。
もろもろ心配で、手に入る情報はなるべくリアルタイムで追いかけていましたが、新しい情報が出てくるたび、私の予想をはるかに凌駕していて、起きていることが信じられませんでした。
まず、第一報で「背中の痛み(back injured)」というのが背中を怪我したんじゃないか、と思った。
しかし、1幕はじめの騎士団長との戦いで怪我なんかする?クヴィエーチェンはまだ39才になったばかりなのに?というのにびっくり。しかも病状は、かなりあとまで発表されなかった。
さらに、病院に運ばれた、という発表の直後(3時間後くらい)に、ペーター・マッティが代役として発表されたこと。元々のカバーはドゥエイン・クロフト(クロフト兄弟のバリトンの方)で、10日のドレスリハーサルでは、1幕早々に抜けてしまったクヴィエーチェンのかわりに立派にジョヴァンニを演じた、と報じられたけれど、MET側としては、新制作のジョヴァンニだけに、もっと話題性と人気のある人にやって欲しかったのでしょう。それにしても、たまたま「セヴィリヤの理髪師」のフィガロ役のために、世界最高のジョヴァンニの一人であるマッティがNYにいたなんて奇跡だ。(マッティは今シーズンのミラノ スカラのオープニングでジョヴァンニをやることが決まっています)。しかもたった2日しか準備期間がないのに、新制作のプレミアなのに、引き受けたマッティもすごい。
しかし何より一番信じられなかったのが、月曜に負傷し、火曜に手術を受け、金曜には月末の復帰を発表したクヴィエーチェンの執念と根性。と同時に、必死で復帰しても、アクションがぬるい、などと批判される可能性も大いにあるわけで、注目度は否が応でも高くなる。
そしてこんな大波乱のなか、新演出のドン・ジョバンニはいったいどうなったのだろうか。
プレミアのマッティの評価は?クヴィエーチェンは本当に舞台に立てるのか?
そして演出の評価、その他の歌手陣の評価、指揮者の評価はどうなったのか?
(次の記事に続く)
(むしろなぜ、リアルタイムで書いておかなかった、とあのときの自分に言ってやりたいが、当時は全然思いつかなかった)
2011年、METのドン・ジョヴァンニは、マイケル・グランデージによる新演出、ポーランドの若手実力派バリトン、マリウシュ・クヴィエーチェンをタイトルロールに、バルバラ・フリットリ、ルカ・ピサローニ、ラモン・ヴァルガスなど実力ある歌手を取り揃え、Live in HDの第二作目として期待された作品でした。
10月13日(木)にプレミア、29(土)がLive in HD。
公演は10/13,17,22,25,29と11/3,7,11の8回(その後、ドンナ・アンナ以外の主要キャスト総入れ替えで2月3月に8回公演)予定。
そこになにが起こったのか。
以下、時間は日本時間から逆算しているので、おおよその推定時間です。
()内が日本時間。
では、いってみよう。
2011.10.10(月) 午後3時
(2011.10.11(火) 午前4時)
10日(月)に行われていた、ドン・ジョヴァンニのドレスリハーサル中、タイトルロールのマリウシュ・クヴィエーチェンが腰の痛みにより、病院に運ばれた、という第一報が入る。Daniel Wakin (New York Timesのクラシック担当)のtweetより。
2011.10.10(月) 午後6時、
(2011.10.11(火) 午前7時)
METにより、13(木)のプレミアのタイトルロールは負傷したクヴィエーチェンに代わり、ペーター・マッティによって歌われることが発表される。MetOperaのtweetより
2011.10.11(火) 午後0時
(2011.10.12(水) 午前1時)
クヴィエーチェンは腰の手術を受けた。月曜日のリハーサルは途中で退出し、木曜日のプレミアはキャンセルした。Daniel Wakin (New York Timesのクラシック担当)のtweetより。
2011.10.12(水) 午後2時
(2011.10.13(木) 午前3時)、
METにより、クヴィエーチェンは月末までジョヴァンニを歌わない。17(月)と22(土)は ペーター・マッティが歌い、25(火)と29(土)(←Live in HDの日)はTBA(未定)と発表される。MetOperaのtweetより
2011.10.14(金) 午後2時
(2011.10.15(土) 午前3時)
METにより、25(火)と29(土)のLive in HDでは クヴィエーチェンがドン・ジョヴァンニのタイトルロールを歌うことが発表される。MetOperaのtweetより
2011.10.15(土) 午後2時、
(2011.10.16(日) 午前3時)
2011-2012シーズン Live in HD 第一作 アンナ・ボレーナのインターミッションにドン・ジョヴァンニのメンバーが出演。
クヴィエーチェンは「まず、現在は元気です。数日前に手術を受けましたが、ご覧のように現在は歩けるし、少しなら走ることもできる。まだ本番まで1週間あります。METのジャパンツアーのとき、腰、椎間板に痛みがありましたが、その時は仕事が出来る程度の痛みでした。しかしこのリハーサルの際、騎士団長との戦いの終わりで、彼を殺そうとしたら、自分の腰にとどめを刺してしまった。それで病院へ連れていかれ、ほんの少しだけど手術しました。」とコメント。
「でもすごく健康そうね。手術から4日しか経っていないなんて信じられないくらい」とルネ・フレミングのコメント。
つまり、主役のクヴィエーチェンがプレミア3日前のドレスリハーサルで腰の負傷で降板し、代役のマッティがプレミアと3回の公演のタイトルロールを務めたが、周囲の心配を受けながらも驚異的なスピードで回復したクヴィエーチェンが手術後、たった2週間で舞台に舞い戻ってきたのです。
もろもろ心配で、手に入る情報はなるべくリアルタイムで追いかけていましたが、新しい情報が出てくるたび、私の予想をはるかに凌駕していて、起きていることが信じられませんでした。
まず、第一報で「背中の痛み(back injured)」というのが背中を怪我したんじゃないか、と思った。
しかし、1幕はじめの騎士団長との戦いで怪我なんかする?クヴィエーチェンはまだ39才になったばかりなのに?というのにびっくり。しかも病状は、かなりあとまで発表されなかった。
さらに、病院に運ばれた、という発表の直後(3時間後くらい)に、ペーター・マッティが代役として発表されたこと。元々のカバーはドゥエイン・クロフト(クロフト兄弟のバリトンの方)で、10日のドレスリハーサルでは、1幕早々に抜けてしまったクヴィエーチェンのかわりに立派にジョヴァンニを演じた、と報じられたけれど、MET側としては、新制作のジョヴァンニだけに、もっと話題性と人気のある人にやって欲しかったのでしょう。それにしても、たまたま「セヴィリヤの理髪師」のフィガロ役のために、世界最高のジョヴァンニの一人であるマッティがNYにいたなんて奇跡だ。(マッティは今シーズンのミラノ スカラのオープニングでジョヴァンニをやることが決まっています)。しかもたった2日しか準備期間がないのに、新制作のプレミアなのに、引き受けたマッティもすごい。
しかし何より一番信じられなかったのが、月曜に負傷し、火曜に手術を受け、金曜には月末の復帰を発表したクヴィエーチェンの執念と根性。と同時に、必死で復帰しても、アクションがぬるい、などと批判される可能性も大いにあるわけで、注目度は否が応でも高くなる。
そしてこんな大波乱のなか、新演出のドン・ジョバンニはいったいどうなったのだろうか。
プレミアのマッティの評価は?クヴィエーチェンは本当に舞台に立てるのか?
そして演出の評価、その他の歌手陣の評価、指揮者の評価はどうなったのか?
(次の記事に続く)
登録:
投稿 (Atom)