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2012年1月16日月曜日

(速報)クヴィエーチェン、バイエルンのロドリーゴをキャンセル

約1ヶ月、放置してしまいました。あけましておめでとうございます。本年はもう少しきちんと記録を残したいところです。

とかいいながら、今も出先なので手短になります。すみません。

せっかくクヴィエーチェンのファーストアルバムが出た(詳細はこちらの記事をどうぞ)というのに、出張中のため、予約して買ったCDが自宅に届いているかさえ怪しいまま、異国の地であくせく働いております。

そういえばそろそろバイエルンの「ドン・カルロ」の初日ではないの、と思ってHP開いて超びっくり、ロドリーゴのキャストが書き換わってる!

バイエルンの公式発表(ドイツ語)はこちら

英語では

Mariusz Kwiecien will be unable to sing in the performances of Verdi's Don Carlo on January 15, 2012. Taking his place in the role of Rodrigo will be Boaz DanielSteven Humes will be singing the role of the Monk instead of Diogenes Randes.

と書かれています。

検索してるけどいまのところ詳細不明。

現在、バイエルンのドン・カルロ、すべての公演のロドリーゴがBoaz Daniel に書き換わっていますので、22日のオンデマンドにおけるマリウシュの出演は、現状ではなさそうです。
ロールデビュー、注目度の高いキャスト、オンデマンド配信、ともろもろ期待していたのですが、とにかく今は大事に至らないことだけを祈ります。

2011年12月18日日曜日

ヨナス・カウフマン、ルネ・パーペ、マリウシュ・クヴィエーチェン出演の「ドン・カルロ」(2012年1月バイエルン)がLive streaming されます!

2012年1月のバイエルンの「ドン・カルロ」がすごそうだな、と思っていたのですが、

Philipp II, König von Spanien René Pape
Don Carlos, Infant von Spanien Jonas Kaufmann
Rodrigo, Marquis de Posa Mariusz Kwiecien
Der Großinquistor Eric Halfvarson
Ein Mönch Diogenes Randes
Elisabeth von Valois Anja Harteros
Die Prinzessin Eboli Anna Smirnova
Tebaldo, Page Elisabeths Laura Tatulescu
Der Graf von Lerma Francesco Petrozzi
Ein königlicher Herold Kenneth Roberson
Stimme vom Himmel Evgeniya Sotnikova
Flandrische Deputierte Tim Kuypers

(公式から持ってきたら、役の表記がドイツ語でちょっとおもしろい)
ドイツだからWEBラジオで聞けるんじゃないかな、と思っていたら、なんとWEB上で Live streaming するようです!

bayerische.staatsoperのニュースページ

パーペのフィリッポにカウフマンのドン・カルロ・・・これは実現しなかったMET来日公演の「ドン・カルロ」と一緒だ(あと、演目違うけど今やってるMETのFAUSTもこの組み合わせ。人気あるなぁ)

公式でもファーストクラスキャスト(!)とかいってる。

The production has a first-class cast, with René Pape as King Philip II, Jonas Kaufmann as the Infante of Spain and Anja Harteros in the role of Elisabeth de Valois. The conductor is Asher Fisch.

(せっかくなのでここにポーザ侯も入れてくれてもいいのにな。まあ、あんまドイツの歌劇場には出てないからな。出ても金髪のドン・ジョヴァンニとかだったし仕方ないか)

再演ですが、プロダクションそのものの評価は悪くなかったようだし(ちゃんとリハーサルさえすればすばらしいものになったのに、とIntermezzoに書かれてますけど、ちゃんとやってもどうしようもないといわれるよりはよほど期待できると思います。つーか前回はトーマス・ハンプソンだったのか、そーかそれはちょっと大変だなぁ。
intermezzoによる2010/07のdon-carlo-munich評はこちら

個人的にはロドリーゴに注目しています。
パーペ、カウフマンはけっこう、「ドン・カルロ」にはいろいろなところで出てますけど、クヴィエーチェンにとって、ポーザ侯ロドリーゴは新しいレパートリーなので(もしかしたらロールデビューかもしれない。すごく昔にCDでロドリーゴの死の場面を歌ったことはあったけど)

彼がこの役をどんな解釈で演じるのかが楽しみなのがひとつ。
もうひとつの楽しみは、カルロよりロドリーゴが若く見えると、オペラ全体にどう影響するか。
私がこれまで見た「ドン・カルロ」では、歌手本人の年齢も劇的な役割も、カルロに対するロドリーゴは兄貴分なものばかりだったので(2011MET日本公演でヨンフン・リーと組んだときのホロストフスキーにいたっては、もはやお兄さん通り越してお父さんだったもんなあ。存在感とか安定感とか)
ちなみに実際の年齢も、クヴィエーチェンのほうがカウフマンよりちょっとだけ若く(といっても3歳差なので大して変わらん)、たぶん背もちょっとだけ小柄なんじゃないか(背丈でドイツ人にかなう気がしません)と思うので、どんな風になるか楽しみです(こういう細かいこと気にしてるのってたぶんオペラ歴が浅く演劇的な表現に気が行くからなんでしょうね)

超見たい!(けど私この時期、わたしインド出張の帰りの日かも知れない・・・飛行機に乗ってたら見れないな。なんとかならんか)

ロドリーゴって一般には男の中の男、ということになっているし、音楽的にはそれで納得なのですが、演じる側としてはやりにくいだろうな、といつも思いながら見ています。(シェイクスピアの「ハムレット」におけるホレーシオが劇的な要請で作られたキャラクターなのと近くて)ほかのキャラクターと比べると人間的な書き込みはちょっと少なくて、役割重視で書かれていると個人的には感じます。ひたすら熱く演じるだけだと革命バカみたいになって残念だし、人間的に演じようとするには、役作りのヒントになるような彼の個人の生活みたいなものがほとんど書き込まれていないし。書かれていることだけだと、カルロのことが大好きなように見えるけど、そういうふうにやってる人は意外と見たことないし・・・。
これらを踏まえて、年齢的な要素や、相手とのケミストリーも含め、クヴィエーチェンによる説得力のあるロドリーゴ像が提示されたらおもしろいな、とは思うのですが。
(しかし友情の二重唱にしろ、容赦なくエボリを切り捨てようとする場面にしろ、楽しみだなあ。フィリッポとの対決はすごくいいだろうからすごく見たい。)
この機会にドンカルロ、もう少しいろいろ見ておきたい気分になってきました。

とりあえず続報と批評に注目しておきたいと思います。
詳細は追って発表されるそうなのでお見逃しなく!

2011年12月10日土曜日

【追記あり】Mariusz Kwiecien の初めてのソロアルバムが出ます!

【追記】amazon.co.jpでの予約注文が開始しました。  ←ここから飛びます(2011.12.22追記)

ポーランド出身のバリトン、Mariusz Kwiecien (マリウシュ・クヴィエチェン、マリウス・キーチェン)の初めてのソロアルバムが出ます!


しかも内容がすごい!
Slavic Heroes というタイトルもすごいが、収録曲もすごい。

TCHAIKOVSKY Eugene Onegin, Iolanta, Mazeppa
RACHMANINOV Aleko
SMETANA Certova stena
MONIUSZKO Halka,
Straszny Dwór / The Haunted Manor,
Verbum Nobile / The word of a nobleman
DVORÁK Šelma sedlák / The Cunning Peasant
RIMSKY-KORSAKOV Sadko
BORODIN Knyaz’ Igor’ / Prince Igor
SZYMANOWSKI Król Roger / King Roger

なんでしょう、このレア感。
スラブ圏のバリトン(一部バス)アリア一網打尽ですね。

というか、ソロリサイタルではこういうラインナップを歌ってるらしい。そうだったのか。
個人的にはEugene OneginとKing Rogerが入っていてうれしい。

クヴィエーチェンのファンだけでなく、スラブ圏のオペラ好きな方にも訴える、なかなか渋めでクレバーなアルバム作成だと思います。オケがポーランド放送交響楽団というのも、この場合は逆に本場感があっていい感じではないでしょうか。

発売元のHarmonia Mundiってわたしはあまり聞いたことのないレーベルでしたが、DECCAとかに大々的に作ってもらうよりいいような気もします。

ここで試聴できます
http://ukstore.harmoniamundi.com/slavic-heroes.html

発売は2012年1月9日とのこと。

日本では、いまのところHMVオンラインが予約を受付中です
(さすがHMV、きちんと日本語で解説もついてて感激!)

HMVの「スラブ・オペラのヒーローたち」

【追記】その後、取り扱いが増えました(2011.12.22追記)

Tower Recordsの「スラヴ・オペラのヒーローたち」
amazon.co.jpのSlavic Heroes
amazon.co.jpからSlavic HeroesをMP3でも買えます(2012/1/24発売予定)

これだけモーツァルト&ベルカントバリトンで鳴らしているのだから、ソロアルバム1枚目はGreat Baritone Ariasかと思いきや、そうじゃないのね。
ちなみに、クヴィエーチェンの有名アリアにご興味ある方には、こんなCDもあります



(このタイトルとジャケはさすがにちょっとやっつけすぎやしないか、といつも思う)

若手オペラ歌手5人で録音しているのですが、METの「ドン・パスクワーレ」でも共演したマシュー・ポレンザーニと真珠採りのデュエットを歌っていて、これがとってもいい感じです。
ほかにも「ドン・カルロ」のロドリーゴの死のシーンや、「清教徒」のジョルジョとリッカルドのデュエット、もちろん「ドン・ジョヴァンニ」のお手をどうぞ等、これぞバリトンな曲を歌っているので、ご興味あればぜひどうぞ。
(ジャケから想像できるとおり、)非常にお求めやすい価格となっております。

amazon.co.jpのA Night at the Opera

HMVのA Night at the Opera

試聴はこちらから↓

amazon.comのA Night At The Opera

2011年11月22日火曜日

Mozart: Don Giovanni (MET Live in HD, Oct. 29. 2011)

話題騒然だったMET Live in HD のドン・ジョヴァンニを見てきた。
いろいろなことが起こったので、ついつい初日以降、劇評など読んでいたために、この3週間がひどく長く感じられてしまった。
新宿ピカデリーでは一番大きい1番スクリーンでの上映。1番スクリーンは音響も一番いいので期待できます。580席。
週末なのでぎっしり埋まっている感じでした 。

今回のドン・ジョヴァンニには(私的)見どころが何点かあって、それは
1、マリウシュ・クヴィエーチェンはちゃんと動けているか(手術から2週間なので身体が心配)
2、つまらないといわれている演出は実際どう感じられるのか
3、ドン・ジョバンニとレポレッロの関係を、この演出ではどのように見せているか

(まあ、他にも、
・クヴィエーチェンのかつらは変じゃないか
・今回ジョヴァンニよりレポレッロのほうがずっと背が高いという現実の前に、きちんとクヴィエーチェンは風格を出せているか、
・ドンナ・エルヴィーラをだますシーンで、この明らかな身長差をどうやって処理しているか
など、もろもろ細かいチェックポイントもあったのだが、それはおいおい)

オペラファン歴の短い私としては非常に珍しいことだが、ルカ・ピザローニのレポレッロは、以前、見たことがある。

ワールドクラシック@シネマ2011で2010年7月のグラインドボーン音楽祭のドン・ジョヴァンニを見たのだ。(2011年8月)
ワールドクラシック@シネマ2011 ドン・ジョヴァンニ

このときはジョヴァンニがジェラルド・フィンリー(奇しくも、今回のMETの後半のキャストのジョヴァンニでもある。ただし後半はレポレッロもジョン・レリエに交代)だった。

演出は現代風で、レポレッロはポラロイドカメラを首からかけて、女の子たちの写真を撮ってカタログに入れてました(となるとカタログというよりアルバムだな。 便利でいいなーと思いました。首からカメラ下げてるピザローニを見て、なぜか「ローマの休日」の新聞記者を思い出した)。

 で、その時の感想メモが残ってるんだけど

映画館で「ドン・ジョバンニ」よかった。笑いどころの多い演出、割とリアルな血糊と現代衣装でとっつきやすい仕上がり。しかしおいしいところはレポレッロ が持って行ったなぁ。ルカ・ピザローニさん。覚えておこう。ジェラルド・フィンリーは悪くないけど、ジョバンニっていう役は複雑すぎるなぁと思う

というあっさりしたもの。(これを読むと、この頃、私は「ドン・ジョヴァンニ」に興味なかったということがよくわかる)。全然感激してない書き方だ。まあ、ぶっちゃけてしまえば、ジェラルド・フィンリーのジョヴァンニが全然良くなかったんですね(今思えば)
なんか機嫌悪い感じで、こんなんで1800人もの女の人がなびくのかな?そうは思えないけどなあ(しかも隣にいるレポレッロのほうが、若いしかっこいいし優しそうで楽しそうにしているし)と思った覚えがある。しかもレポレッロといまいちかみ合ってない?なんかフィンリーにとりつくしまがなくて、という印象が強かった。

なのでこのときはピザローニの一人勝ちだったのですよ。私のなかでは。

だから、今回のMETのキャストを最初聞いたときはちょっとびびりました。
これはまさか、演技派で鳴らしたクヴィエーチェンが食われてしまうこともありうる?と思ったのです。演技のみならず、ピサローニがとても長身でイタリア人でわかりやすいハンサム、というのも、ちょっとした懸案事項だったわけです。
(少し調べてその心配はすぐ払拭されました。二人はジョヴァンニとマゼットで共演したこともあるし、伯爵とフィガロでの共演もあったから(もちろん「フィガロの結婚」の方ね。いくらハイバリトンでも、ロッシーニテノールの伯爵にはなれませんから)
というより、本来、ピザローニのレポレッロはかなり控えめなようです。レポレッロをやるときは、もちろんジョヴァンニの役に合わせるところからはじめます、とインターミッションのインタビューでも言っていましたし。だからよほど私がフィンリーのジョヴァンニと合わなかったんだろうと思う。フィンリーいい人だと思うんですけどね。別の役で見てみたいです)

クヴィエーチェンのジョヴァンニはたしかにノーブルですね。高貴で華やかで動きが機敏で頭の回転が速くてゲーム好きな感じ。余裕があるというよりはスピーディ。ちょっと躁的な気もします。なんだってお茶の子さいさいでできるけど、なんだってうまくいってしまうことが不満、という素振りを感じます。(でも実際は、オペラの中ではすべての企みは失敗しているのだけど)

クヴィエーチェンの声はすごく不思議で、CDに録音された歌声を聞くと無理に深い声を出そうとしているように聞こえてしまうのですが、オペラの映像の中で聞くと、心地よい軽い声に聞こえるんですよね。私には。なんでだろう?これはすごく不思議なことです。私としては、オペラの中で響く彼の声を魅力的に感じます。セレナーデとか、本当に綺麗でした。声の調子が悪くなくて安心しました。

ピザローニの歌もすごくいいです。聞いていて楽しくなるレポレッロらしさがよく出ている歌い方だと思います。あとレチタティーヴォ。ネイティヴのイタリア人なのもあり、レチタティーヴォが綺麗で表情豊かな歌声でした。

バーバラ・フリットリはいつも美しい声でうっとりしますが今回も綺麗でした。

(あとはあまり印象に残らなかった。ツェルリーナってなんで毎回、キンキン声のソプラノがキャストされるんですかね?そういう役作りなのか?音域の問題か?)

まずオープニングから。ゲネプロではテラスでもみあってたジョヴァンニとドンナアンナですが、地面で争っています(クヴィエーチェンに梯子を登らせないためだと思う。)この変更はそんなに違和感なく進みました。クヴィエーチェンもちゃんと争ってます。騎士長と戦うシーンも、ちょっと手加減しているけれど、そこまで間延びした演技じゃない。まず、ひとつめの心配はクリアのようです。

演出ですが、たしかに舞台装置はあまりよくはないかもしれない。
アパートのバルコニーみたいなのがたくさん並んでいる壁が立っていて、適宜、その壁が真ん中から分かれ、左右に開く仕組みです。なんというか、圧迫感があるし、床の面積があまりないし、奥行もないのがちょっと視覚的にはあまり面白くないかも。
しかし(これはMETのライブビューイングではよくあることですが)ライブビューイングのカメラはかなりアップで歌手を映すので、実際にオペラハウスの観客席からの舞台を見るのに比べ、舞台装置の粗が気にならない傾向が強いです。なので今回も、あまりいい舞台装置じゃないだろうけど映像で見る分には気にならない、というのが私の素直な感想です。

ちなみにレポレッロが替え玉になってエルヴィーラを騙すとき、ピザローニは身長差をごまかすため、主にフリットリの身体に抱きついて、彼女が立ってられないようにしてました。タックルするみたいに。もしふつうに並んで立ったら、(フリットリとクヴィエーチェンはほぼ同じくらいの身長なのに対し)ピサローニは頭一つ分、差があってバレバレなので、こういうところは工夫してますね。

 ジョヴァンニとレポレッロの関係について、このプロダクションはかなり力を入れている、というのが事前から語られていました。例えばアンナ・ボレーナのインターミッションでのインタビューでは



司会のルネ・フレミングに
「今回のプロダクションにはこれまでのドンジョヴァンニとは違う、新しいアプローチがありますね。あなたとマリウシュは演出のマイケル・グランデージとともにどのようにして役にアチーブしたの?」と聞かれたピザローニが
「まず、わたしたちはドンジョヴァンニとレポレッロの関係がこのオペラの鍵になる要素だという事実に同意しました。ですから、関係性を築き上げることに長い時間をかけました。特に私の役にとってそれは重要なことでした。・・・彼らはまるで結婚しているカップルのように、愛憎半ばする関係なのです。」
というふうに回答しています

ここまで言っておいてそれが舞台に反映していなかったらちょっと悲しいので、どのくらいそれが見えるのかに関心がありました。

まず(劇評でもかなり指摘されてましたが)レポレッロが召使いというにはあまりにもノーブル(笑)
まあ、それはピサローニの外見と、やや控えめな演技から、仕方のないことではあります。
私個人として、粗野なレポレッロよりこういうレポレッロのほうが表現としては好きです。
むしろそれをよく利用して、今回の2人は劇中ではドン・ジョヴァンニと召使いというより、ドン・ジョヴァンニとその見習いみたいのように見えました(実際、近い将来、確実にジョヴァンニをやるであろうピザローニ自身は、まぎれもなくジョヴァンニ見習いともいえます)

今回、ジョヴァンニが一番嬉しそうだったのは、またカタログの人数が増えるぞ!とレポレッロに言うシーン(ちなみにこのときのレポレッロもすっごく嬉しそう)
このふたりのカタログにかける意気込みを見ていると、女の人と関係を持つより何より、ふたりでカタログ作ってるのが楽しいんだろうな、と思わせる仕上がりです
(なので今回は女性キャラクターたちは置いてかれてる感が強いかもしれません)

 この解釈自体はそこまで新しいものとは思いませんが、こうして意図した、ジョヴァンニとレポレッロの関係に焦点をあてた演技を作り上げ、その演出をきちんと舞台上で表現できていることは評価に値すると思います。

そして、なにより特筆するべきは、今回のドン・ジョヴァンニは、キャスト全体の一体感がとても高く感じられたことだと思います。
今回の演出家のマイケル・グランデージは装置のディレクションでは、あまり高い評価を受けられそうもないけれど、歌手に対して舞台上でキャスト全体に一体感を持った演技をさせることに成功している点は、評価されるべきだと思います。

舞台上の一体感が良く、たくさん笑える、すごく面白いドン・ジョヴァンニでした。
私としては、見る価値は確実にあると思いますので 、もし迷っている方は、ぜひ、映画館へお運びください。

私ももう一回見たいけど、もう今週は行く時間がないからなぁ。

あ、そうそう、クヴィエーチェンのかつらはかっこわるくなかったです。
良い出来で安心しました。



Mozart: Don Giovanni

 (MET Live in HD, Oct. 29. 2011) 

New production
Don Giovanni
Mariusz Kwiecien
Leporello
Luca Pisaroni 
Donna Anna
Marina Rebeka
Donna Elvira
Barbara Frittoli
Don Ottavio
Ramón Vargas
Zerlina
Mojca Erdmann
Masetto
Joshua Bloom 
Commendatore
Conductor:
Director:
Set Designs:
Costumes:
Lighting:
Stefan Kocan 
Fabio Luisi 
Michael Grandage
Christopher Oram
Christopher Oram
Paule Constable

2011年11月7日月曜日

METのDon Giovanniに何が起こったか

ここしばらく、私の最大の関心事であったMETのDon Giovanniに何が起こったか、時系列にまとめてみました。
 (むしろなぜ、リアルタイムで書いておかなかった、とあのときの自分に言ってやりたいが、当時は全然思いつかなかった)

2011年、METのドン・ジョヴァンニは、マイケル・グランデージによる新演出、ポーランドの若手実力派バリトン、マリウシュ・クヴィエーチェンをタイトルロールに、バルバラ・フリットリ、ルカ・ピサローニ、ラモン・ヴァルガスなど実力ある歌手を取り揃え、Live in HDの第二作目として期待された作品でした。
10月13日(木)にプレミア、29(土)がLive in HD。
公演は10/13,17,22,25,29と11/3,7,11の8回(その後、ドンナ・アンナ以外の主要キャスト総入れ替えで2月3月に8回公演)予定。

そこになにが起こったのか。

以下、時間は日本時間から逆算しているので、おおよその推定時間です。
()内が日本時間。

では、いってみよう。

2011.10.10(月) 午後3時
(2011.10.11(火) 午前4時)
10日(月)に行われていた、ドン・ジョヴァンニのドレスリハーサル中、タイトルロールのマリウシュ・クヴィエーチェンが腰の痛みにより、病院に運ばれた、という第一報が入る。Daniel Wakin (New York Timesのクラシック担当)のtweetより。

2011.10.10(月) 午後6時、
(2011.10.11(火) 午前7時)
METにより、13(木)のプレミアのタイトルロールは負傷したクヴィエーチェンに代わり、ペーター・マッティによって歌われることが発表される。MetOperaのtweetより

2011.10.11(火) 午後0時
(2011.10.12(水) 午前1時) 
クヴィエーチェンは腰の手術を受けた。月曜日のリハーサルは途中で退出し、木曜日のプレミアはキャンセルした。Daniel Wakin (New York Timesのクラシック担当)のtweetより。
 
2011.10.12(水) 午後2時
(2011.10.13(木) 午前3時)、
METにより、クヴィエーチェンは月末までジョヴァンニを歌わない。17(月)と22(土)は ペーター・マッティが歌い、25(火)と29(土)(←Live in HDの日)はTBA(未定)と発表される。MetOperaのtweetより

2011.10.14(金) 午後2時
(2011.10.15(土) 午前3時)
METにより、25(火)と29(土)のLive in HDでは クヴィエーチェンがドン・ジョヴァンニのタイトルロールを歌うことが発表される。MetOperaのtweetより

2011.10.15(土) 午後2時、
(2011.10.16(日) 午前3時)
2011-2012シーズン Live in HD 第一作 アンナ・ボレーナのインターミッションにドン・ジョヴァンニのメンバーが出演。
クヴィエーチェンは「まず、現在は元気です。数日前に手術を受けましたが、ご覧のように現在は歩けるし、少しなら走ることもできる。まだ本番まで1週間あります。METのジャパンツアーのとき、腰、椎間板に痛みがありましたが、その時は仕事が出来る程度の痛みでした。しかしこのリハーサルの際、騎士団長との戦いの終わりで、彼を殺そうとしたら、自分の腰にとどめを刺してしまった。それで病院へ連れていかれ、ほんの少しだけど手術しました。」とコメント。
「でもすごく健康そうね。手術から4日しか経っていないなんて信じられないくらい」とルネ・フレミングのコメント。


つまり、主役のクヴィエーチェンがプレミア3日前のドレスリハーサルで腰の負傷で降板し、代役のマッティがプレミアと3回の公演のタイトルロールを務めたが、周囲の心配を受けながらも驚異的なスピードで回復したクヴィエーチェンが手術後、たった2週間で舞台に舞い戻ってきたのです。
もろもろ心配で、手に入る情報はなるべくリアルタイムで追いかけていましたが、新しい情報が出てくるたび、私の予想をはるかに凌駕していて、起きていることが信じられませんでした。

まず、第一報で「背中の痛み(back injured)」というのが背中を怪我したんじゃないか、と思った。
しかし、1幕はじめの騎士団長との戦いで怪我なんかする?クヴィエーチェンはまだ39才になったばかりなのに?というのにびっくり。しかも病状は、かなりあとまで発表されなかった。

さらに、病院に運ばれた、という発表の直後(3時間後くらい)に、ペーター・マッティが代役として発表されたこと。元々のカバーはドゥエイン・クロフト(クロフト兄弟のバリトンの方)で、10日のドレスリハーサルでは、1幕早々に抜けてしまったクヴィエーチェンのかわりに立派にジョヴァンニを演じた、と報じられたけれど、MET側としては、新制作のジョヴァンニだけに、もっと話題性と人気のある人にやって欲しかったのでしょう。それにしても、たまたま「セヴィリヤの理髪師」のフィガロ役のために、世界最高のジョヴァンニの一人であるマッティがNYにいたなんて奇跡だ。(マッティは今シーズンのミラノ スカラのオープニングでジョヴァンニをやることが決まっています)。しかもたった2日しか準備期間がないのに、新制作のプレミアなのに、引き受けたマッティもすごい。

しかし何より一番信じられなかったのが、月曜に負傷し、火曜に手術を受け、金曜には月末の復帰を発表したクヴィエーチェンの執念と根性。と同時に、必死で復帰しても、アクションがぬるい、などと批判される可能性も大いにあるわけで、注目度は否が応でも高くなる。

そしてこんな大波乱のなか、新演出のドン・ジョバンニはいったいどうなったのだろうか。
プレミアのマッティの評価は?クヴィエーチェンは本当に舞台に立てるのか?
そして演出の評価、その他の歌手陣の評価、指揮者の評価はどうなったのか?
(次の記事に続く)