2011年11月24日木曜日

第6回静岡国際オペラコンクール入賞者記念コンサート(紀尾井ホール, Nov 24. 2011)

今日は第6回静岡国際オペラコンクール入賞者記念コンサートを見てきました。
今回の入賞者(=本日の出演者)はこちらの3名。


ソプラノ 吉田 珠代  第2位(第1位該当者なし)・三浦環特別賞
 バリトン イム チャンハン  第3位
ソプラノ 高橋 絵理  第3位・オーディエンス賞
この組み合わせだと、ついつい、ソプラノは聞き比べになってしまうけど、すごくおもしろかった(特に今回は、二人とも「ラ・ボエーム」を歌う予定だったので、余計、気にしてしまった)
プログラム詳細は下記

自由席だったので(紀尾井ホールの音響に興味があって)前半は上手の席 、後半は二階席正面に座りました。

前半は高橋さん、イムさん、吉田さんの順で2曲づつ、20分の休憩を挟み、
後半はイムさん、高橋さん、吉田さんの順で2曲づつ歌います。

  1. まず高橋さんの一曲目。 ルサルカから「月に寄せる歌」のアリア。これはちょっとタイムリーです(※昨日から新国立劇場でルサルカが上演中だから)
    クリアで明るい声。そしてクライマックスに向けて、どんどん増す音量。圧倒されました。例えていうなら、METを揺るがす大声、ことソンドラ・ラトヴァノスキー姉さん系の大声量。(褒めてます。生まれて初めて生で観たオペラがヴェルディの「イル・トロヴァトーレ」で、ソンドラ姉さんのレオノーラが大活躍してたんですよ。わたしはソンドラさんはすごい好きです)でも全くにごりのないきれいな声であれだけ声量があるとなんかすごいです。
    彼女がオーディエンス賞を取るのはすごくわかる。声で圧倒される、というのは最も原始的なオペラの楽しみかただと思うし、わたしもいまでもやっぱり声の迫力のある歌を聴くと感激します。わたしのすごく好きな声でした。
  2. 次はイムさんの1曲目。この人の声は明るめのバリトンの響きに感じました。(ところがその印象が後半ちょっとかわります。それは後ほど)プッチーニのあまり知らない曲でしたがきれいにまとめてた。
  3. そして今回最高位の吉田さん。曲はコジ(これまでの中ではダントツ有名曲) うん?あれ?わたしのれない?なぜ?
  4. 高橋さん、次はタンホイザー!いやぁ、この声量ならワーグナーは映えるでしょう!
  5. イムさんはドイツ語の曲。このときが1番、 声が軽く響いていた気がします。(わたしはバリトンは明るく軽く響くのが好きなので、このときの響きが一番好きでした)
  6. そして吉田さん、ボエームから「私の名はミミ」
    (不公平にならないようにあらかじめ断っておきますが)わたしはどうもプッチーニがやや苦手で、そのせいもあってか、ここでもどうもピンとこない。

    そのまま休憩に突入。(わたしはここで2階席に移動しました)
    今回のプログラムの傾向として前半は地味目の曲、後半は有名曲、という感じでした。もしかしたら、後半はお客さんが聞きたそうな曲を歌ってくれたのかもしれません。
  7. 後半はイムさんからスタート。ヴェルディのファルスタッフ。このときに、「あれ、ちょっと無理して深い声出そうとしてる?」と感じてしまいました。
    若いバリトンを聞くと、たまに感じるんですよ(特にヴェルディで起こりやすい)なんか、無理してバリトンぽく歌ってるみたいな感じが。イムさんの声は前半では明るくて華やかな声だったように感じたので、変に力は入んないほうがいいなあ、と感じました(ただし、この響きの変化の原因はちょっと謎です。後半2曲ともヴェルディだったせいで声の質感が変わって聞こえたのか、席移動のせいなのか、判断がつかなかった)
  8. そしてここで高橋さんの「ラ・ボエーム」がきました。さようならのアリア。
    プッチーニなのであまり心は動かなかったのですが、なんとなく、吉田さんよりも(漠然と)ミミという役は似合ってるような気がする、と思う。
  9. 次の吉田さんはドンジョヴァンニのアリア。
    しかし、これ、最初全然わからなくて、「あれ、わたしここ1箇月くらい、ドン・ジョヴァンニしか聞いてないのに、なんでこの曲わかんないんだろう?と思いましたが、しばらく聞いてドンナ・アンナの超絶アリアと判明。
    そうかわたしは、キャラクターとしてのドンナ・アンナにいまいち思い入れがないせいで、まさかアリアの判別もつかないのか、と自分でびっくりしました。やれやれ。
    そしてこの時に初めて、吉田さんの声って大人っぽいんだ、と気づきます。
    メゾ、とは言わないけど、声のカラーが暗めで、ちょっとお姉さんな声なんですね。
    (だから、ちょっとボエームのミミが違う感じがしたのだ、とここで納得)

    ここからは怒涛のラスト曲です。
  10. イムさん、バリトンとして外せない超名曲「ドン・カルロ」ロドリーゴの死のシーンを持ってきた!これはもう、この歌が好きなのでとりあえず楽しみ!と思ってワクワク。
    第一声を聞いて、いい声だ!と思うと同時に・・・なんか違う?・・・これ・・・フランス語じゃん!てゆーか「ドン・カルロス」じゃん!事件発生!
    ・・・そういえば「ドン・カルロス」は聞いたことなかったので、非常に珍しい体験をした気持ち。
    パフォーマンスはほんとによかったです。これを聞きたかったのよ!という感じ。(ただ、個人的にはやっぱりイタリア語版で聞きたかったなあ)なんにせよ、やっぱこの曲聞くとアガります。
  11. 高橋さんの「運命の力」
    ソンドラ姉さんに例えるぐらいなんで、やっぱり高橋さんのヴェルディを聞いてみたかったんです。そして超良かった。迫力あるし、声にもあってる。すごくよかった。
  12. そして本日のハイライト、吉田さんの「こうもり」チャールダッシュ!
    ここで超納得。吉田さんの声は、やっぱり暗めカラーで大人っぽいから、こうもりの伯爵夫人がピッタリ!ダンスも決めて、めちやめちゃかっこよく盛り上げてくれました。
そしてこの時に、衣装の選び方も納得。
高橋さんは、(上の写真とは違って)薄いピンク色でスカートがふわーと広がって、スカートの右半分に目もくらむばかりにラメをふりかけた、ロマンティックで華やかで、若々しくてチャーミングなドレスを着ていたんですね(とっても似合っていてかわいらしかった)。

それに対して吉田さんは、この写真で写っている、深い紫色で、スカートがマーメイド型で体にフィットして、胸の谷間を強調したドレスを着ていらっしゃいました。で、はじめに見たときに、大人っぽいけどちょっと地味に感じるな、と思ったんですが、こうもりを歌う吉田さんを見て、なんて声のカラーを的確に表した衣装だったんだろう、と感心しました。
(でも、もしひとつだけ言えるなら、彼女の声とキャラクターなら、ミミを選んだのはあまり賢い選択じゃないように思いました。)

この曲で本当に盛り上がって、今日のコンサートは終了。
若手によるガラみたいで、すごく楽しかったです。

でも、実は静岡国際オペラコンクールの最大の特色は2次予選にあるんです。

「オペラの一役を自選し、全曲の中から指定された箇所を約20分間演奏して審査を受けます。これは世界でも数少ない審査方法で、出場者の発声技術や表現力はもとより、経験も問われる難度の高い内容となります。」

ふつうの声楽のコンクールでは、アリアを歌ったりする審査が多い中で、静岡では、その役の場面を演じることが審査対象になってます。ピアノ伴奏のみで、場合によってはピアノ伴奏者が相手役を歌ったりもするそうです。すごい面白そう。

素敵なコンサートをありがとうございました。すごく楽しかったです。

【プログラム】

1 髙橋 絵理
ドヴォルジャーク 「ルサルカ」 空の奥深くにいるお月様
Dvořák "Rusalka" Měsičku na nebi hlubokém

2 イム チャンハン
プッチーニ 「エドガール」 この愛は僕の恥
Puccini "Edgar" Quest amor, vergogna mia

3 吉田 珠代
モーツァルト 「コジ・ファン・トゥッテ」岩のように動かずに
Mozart "Così fan tutte" Come scoglio immoto resta

4  髙橋 絵理
ワーグナー 「タンホイザー」 おごそかなこの広間よ
Wagner "Tannhäuser" Dich, teure Halle

5  イム チャンハン
コルンゴルド 「死の都」 わが憧れ、わが幻
Korngold "Die tote Stadt" Mein Sehnen, mein Wähnen

6  吉田 珠代
プッチーニ 「ラ・ボエーム」 私の名はミミ
Puccini "La bohème" Si mi chiamano Mimi

休憩

7  イム チャンハン
ヴェルディ 「ファルスタッフ」 夢か現か
Verdi "Falstaff" È sogno? O realta?

8  髙橋 絵理
プッチーニ 「ラ・ボエーム」 さようなら
Puccini "La bohème" Addio, donde lieta usci

9 吉田 珠代
モーツァルト 「ドン・ジョヴァンニ」 恋人よ、私を不親切な女と思わないで
Mozart "Don Giovanni" Non mi dir, bell' idol mio

10  イム チャンハン
  ヴェルディ 「ドン・カルロ」 おお、カルロお聞き下さい
  Verdi "Don Carlos" O Carlos, Ecoute

11 髙橋 絵理
ヴェルディ 「運命の力」 神よ平和を与えたまえ
Verdi "La forza del destino" Pace, Pace mio Dio

12 吉田 珠代
J.シュトラウス 「こうもり」 ふるさとの調べよ
J.Strauss "Die Fledermaus" Klänge der Heimat

第6回静岡国際オペラコンクール入賞者記念コンサート
(11月24日(木)紀尾井ホール)

出演

ソプラノ 吉田 珠代  第2位(第1位該当者なし)・三浦環特別賞
バリトン イム チャンハン  第3位
ソプラノ 高橋 絵理  第3位・オーディエンス賞

ピアノ  村上 尊志

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