2011年11月29日火曜日

黛敏郎: 「古事記」(東京文化会館50周年記念フェスティバル, Nov. 23. 2011)

Blogを定期的に更新しはじめてから約1週間たち、アクセス解析など眺めてみたら、METのライブビューイングについての記事よりも、日本のオペラやコンサートについて書いたページのほうがアクセスが多かったことに気がつきました(正直、これにはびっくりしました。そういうものなんですね)。それはつまり、いまのところ、このblogに関していえば、どうやらそっちのほうが需要がある、という意味だと思うので、見に行ったコンサートやオペラはなるべく落とさずに記録を残しておこうと思います。自分としても実演に接して好感を持った歌手の方の名前とかも記録しておきたいので、これが一石二鳥というやつですね(しかし私的にはMET記事やらなんやらにもかなり力が入っていることもありますので、よろしければそちらもお読みください)。
これは実際に見たのは11月23日(祝)だったのですが、記事が追いつかなかったため、本日、アップしました。しばらくしたら、23日の場所に戻します。

そういえば日本のオペラを見るのは初めて。
しかし、現代の新作オペラが結構好きな人間なので、たぶんイケルはず。
なにより日本初演なんだから、ここで見ておかないと、この先見られるチャンスがあるか、ちょっとわからない、というわけで、行ってきましたよ東京文化会館50周年記念フェスティバルの目玉、黛敏郎によるオペラ 「古事記」。

客席、賑わってます。入りは8割以上じゃないかな。ちょっとほっとした。
オペラ古事記は古事記から四つのエピソードを抜き出し、プロローグとエピローグをつけた四幕構成。

このオペラで扱われるエピソードですが、自分が意外と知っててびっくりしました。外国文学や外国文化のほうが得意だったので、古事記なんて読んだこともないし、さして興味がなかった(失礼!)にも関わらず、オペラで見てみたらエピソード単位では知っていました。
ああ、意外と刷り込まれてるんだ、とびっくり。

まず、プロローグとエピローグがすでによい。
能楽師の観世銕之丞さんがうたいのようにやってくれるんですがかっこよい!
基本、能の旋律なのに一箇所だけオペラ風に音を高めの半音上げた音にもっていって、
それがぞくぞくするかっこよさでした(プロローグ・エピローグのみ日本語)。

舞台装置はわりとシンプル。
円形とその周りを囲む部分(服でいったら襟みたいな部分)があって、真ん中の円形部分は回ります。ローマとかの円形劇場を思い出させる仕上がり。
これの背景に映像を映写したり、布を広げたりして場面が作られていきます。

衣装がとても美しくてため息が出るほど。上品だけどキラッキラです。
歌手の皆さんは美しい声、美しい容姿でほれぼれ。
特にイザナミの福原寿美枝さんとイザナギの甲斐栄次郎さんが美しかった。

なんとなく、スサノオがテノールだったことにびっくり。
スサノオ=バッドボーイ=バリトン、だろうと思ってましたが、バッドボーイというよりは無垢な力自慢、というふうに意味づけられているんですね。そして彼がみんなに信頼される神様になりたい、といってヤマタノオロチを退治することで一人前になるという。スサノオの物語はビルドゥングスロマンだったんだ!とびっくり。

音的には、非常に盛り上がる音楽でした。映画音楽のようなわかりやすさ。
正直、もうすこし難解だったり、乗り切れない音楽かもしれないと覚悟していたので、観客に対してかなり親切な音楽だと感じました。

個人的には、ヤマタノオロチの姿を出してほしかったです。
(スサノオとヤマタノオロチの戦いはコーラスによって歌で描写されるのみでした)
友人は、変なもの出されるより、言葉だけで語ったほうがよい、といっていました。
まあ、それはそうかもしれない。

全員にプログラムが配られましたがその中で、いざなみを追いかけて黄泉の国に向かうイザナギのエピソードがオルフェに似ていること、(無垢な力持ちの)スサノオがヤマタノオロチを倒す戦いがワーグナーのリングっぽいことなどから、きちんと解説しないと、ドイツの観客に剽窃と思われてしまう、という指摘を受けた、という話が面白かった。
たしかに、よく似てますよね。
神話ってすごいなあ。

とても楽しみました。日本初演を見ることができて、ほんとよかったです。

東京文化会館50周年記念フェスティバル
黛敏郎 「古事記」
2011年11月23日(水・祝)14:00

■指揮         大友直人
■演出         岩田達宗

イザナギ        甲斐栄次郎(バリトン)
イザナミ        福原寿美枝(メゾソプラノ)
スサノヲ        高橋 淳(テノール)
アマテラス        浜田理恵(ソプラノ)
オモイカネ        妻屋秀和(バス)
アシナヅチ        久保田真澄(バス)
天つ神/クシナダ        天羽明惠(ソプラノ)
使者            吉田浩之(テノール)
語り部        観世銕之丞
風の神/見張りの神        門間信樹(バリトン)
雨の神        清水理恵(ソプラノ)
雷の神        羽渕浩樹(バリトン)
雲の神        高橋華子(メゾソプラノ)
合唱            新国立劇場合唱団/日本オペラ協会合唱団
管弦楽        東京都交響楽団

■舞台美術     島 次郎
■衣裳         前田文子
■照明         沢田祐二
■振付         高野美智子
■合唱指揮     三澤洋史
■舞台監督     菅原多敢弘

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